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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

(それにしても、何者じゃろうか?)

このあたりでは聞きなれぬ歯切れのよい東京言葉だ。金五郎は、ふっと、般若の五郎を思い出した。すると、潜在意識の中にある不可思議な記憶の作用が、俄かに働いて、金五郎を東京の浅草につれて行った。見たことがあるようだと思ったのは、浅草であったのかも知れない。瓢箪池の傍で、般若の五郎の手先になって、襲撃して来た暴漢の中に、その男がいたような気がする。そして、それはどうやら、般若の五郎によく似ているようだ。

(五郎の子供なのか?)

しかし、般若の五郎の息子が、どういうわけで、吉田磯吉に頼まれて、自分を脅迫したのか――わからない。親父の五郎には、不識の間に、大切な人生の信条を教えられて、ひそかに、感謝していたが、その息子から、また、教訓をあたえられたのか。奇妙なめぐりあわせになるものだ。苦笑ばかりが湧く。

(お京といっしょに来たのかも知れん?)

あり得ないことではない、と思われた。

「おれは、馬鹿じゃ」

金五郎は、泣きそうな顔になって、力のない足どりで歩きだした。

西新町に出て、「六ゾロ」ののれんを潜った。

「こりゃあ、オヤジ、一人ですか」