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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

「ヒヤヒヤ」

「仙人のいうとおり」

掛け声、拍手、笑声が走るかと思うと、

「バイキンはお前じゃあ」

と、弥次る者もある。

控室では、十四五人、雑談をしながら、弁士は出番を待っている。

すでに、表は真暗になっていた。窓の外に、夜風にゆらいでいるアカシアの葉が、電燈の光に照らしだされ、幻燈のようなあざやかに濃い緑を、浮きあがらせている。星が美しい。

(この樹の下で、この間、二十人もの抜刀隊に脅迫されたんじゃが、……)

金五郎はそれを思いだして、口中のざらつく思いを味わっていた。同時に、そのときの隊長、唐獅子の彫青を入れた、鳥打帽の男が、お京とつれだって、演説会場にあらわれている、ということを考えて、異様な昏迷をおぼえずには居られない。その男が般若の五郎の子供にちがいないことは、疑う余地がないと思われた。

(二人は、今夜も、きっと、聴衆のなかに、紛れこんどるに違わん)

それを考えて、妙な胸騒ぎを感じていると、

「玉井君、どうかしたかね? なんだかそわそわしてるようだが、……」

と、井上安五郎にいわれた。

大石鶴松が、入って来た。

「玉井さん、南階段の柱のところに、立っとりますよ」