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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

そこの小さな一軒が、前から借りてあったが、それが新夫婦の新家庭になった。

子分の城三次が、渡船の中で、マンに逢ったとき、若オヤジの祝言には、町中ひっくりかえる騒ぎをしようといった。子分たちも、友人たちも、手ぐすね引いて待っていた。しかし実際は、いつどこで行われたか、誰も知らないほど、ひっそりと、式が挙げられた。

老松町の六畳の間に、七人分の料理がならべられた。近くの「つねき食堂」から、一人前四円の仕出しを取ったのである。酒も、あまりなかった。花婿も、花嫁も、普段着。勝則は単衣に袴、角隠しも、綿帽子も被らない島田の光丸は、大きな腹が隠しようがない。

列席者は、媒酌人の井上安五郎、辻木惣八、原田雲井、玉井金五郎、それに、花嫁の附きそいとして、姉の光三。

「高砂や、この浦舟に、帆をあげて、……」

それは、原田雲井が謡った。

みんなが帰ってしまった後、二人きりになると、どちらも、なんだか、ぼんやりなるような気落ちを感じていた。

「とうとう、一緒になったなあ」

「ウフフ……」

二人は知らずして、金五郎とマンとが、彦島で、はじめて、世帯を持ったときと同じ言葉を、呟きあっていた。