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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

「はい、八時を鳴らそうと思いまして……」

「わたしに撞かせてくれませんか」

「そうですか」と、檀徒総代のもの好きを笑いながら、「よかったら、どうぞ」

「八つ、鳴らすとでしたかな?」

「五つほどで、ええです」

金五郎は、鐘楼に登った。

高台になっているので、一望の下に、若松市街が見えた。いつも見なれた、住みなれた自分の街の風景を、金五郎は、日ごろとはまったく異った感慨で、しみじみと、見わたした。ちかちかと、眼にしみるようである。これが見おさめになるかも知れない。

吊り下げられてある撞木を、手にした。軽く反動をつけてから、力まかせに、梵鐘に打っつけた。

ゴワアアン、……

鼓膜が割れるほどのとどろきが、はねかえって来た。後は、ウォン、ウォン、と余韻を引いて、爽やかな鐘の音が、朝の空気をゆりうごかして、全市にひろがって行く。

金五郎は、なにか、胸のひらけるような気持で、二つ、三つ、と撞き鳴らした。

「うまいもんですなあ」

和尚が、笑って、見ている。

五つ撞いて、鐘楼から、降りて来た。

「玉井さん、今年も、組合の「川施餓鬼」をやりますか」

「やります」

「争議中じゃから、どうじゃろうか、と思って……?」