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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

おれは、二十五年ぶりに、アイタ、というようなもんじゃ。

お京から、おれは、オンテレ・メンピン、女房が恐いのじゃろう、といわれたことがあるが、このとき、おれは考えた。

(女房に操を立てて、お京、お葉――二人の女を殺してしまうことが、果して、人間の道じゃろか? 男の道じゃろか?)……」

マンは、ゴクッと、唾をのんだ。まるで、猛獣が、相手の出よう一つで、襲いかかるような姿勢で、暗黒のなかに、凝結していた。

金五郎も、生唾をのみこんだ気配だった。

突然、天井裏を、猫が鼠を追って走った音がした。マンは、その音が、雷鳴のようにひびいて、ぎょっとした。身体がふるえ、動悸が打つ。

不気味な沈黙が、ちょっとの間。

「しかし」と、金五郎は、また、低い声で、つづけた。「おれは、考えなおした。そして、お葉にいうた。

――ようく、わかった。わたしも人間じゃ。男じゃ。血も通うとれば、情もある。あんただちの望みをかなえてあげたい。じゃけど、今はいけん。九州に帰って、女房の許可を貰うて来るけ、それまで、待っておくれ。

――おかみさんが、許可なんてするもんですか。

――いんや、マンは、わかった女子じゃけ、きっと、許してくれる。