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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

金五郎の言葉がやんだ。しいんとなる。

呼吸をひそめていたマンは、息苦しい沈黙に耐えかねて細い声でいった。

「もう、いうことはないの?」

「咽喉がかわいた。ラムネをくれ」

マンは、びっくりした。

けたたましい笑い声が、暗黒のなかで、爆発した。飛びあがった猫が、一散に逃げて行った。金五郎は転げまわって、笑っているようである。

マンは、夫が発狂したのかと思った。

「お父さん、……あなた」

夫の身体をゆすぶった。それでも、笑いがとまらない。

しかし、金五郎は、はじめから、全部、知っていたのである。マンの呪禁の方法は、前に、何度も聞いている。自分の国にも似たような魔術がある。やはり、便所の草履を男の胸にのせ、下帯を投げて、それを巻きとれば、それにしたがって、べらべら、しゃべりだすというのである。しかし、金五郎はそんなことは信じない。けれども、呪禁好きのマンに追随して、おかしさをこらえながら、得意の芝居を打ったのであった。

(でも、よかった)

と、思う。まともには話しにくいことである。深夜の奇怪な対決が、悲劇を喜劇的にすることによって、たしかになにかを雲散霧消したのである。