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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁
私にはいま他にどんな張り合いもない。私はもう自分の臆面のなさを恥じまいと思う。私は単に人ずれがして汚れただけかも知れぬ。それならそれでかまわぬ。あまり嘘を云うな。
「ところで今度は僕の方でお伺いしたいのだが、初めて会った太宰なるものは、どうだね? 正直のところ。」
贋者としては気になった。後日の心得にもなることだ。
「作品の通りの方だと思いました。」
「作品の通りと云うと?」
「親しみのある、いい方だと思いました。」
ああ、生れて初めて聞く言葉だ。思わず有難うとお礼を云いたい気持であった。
と、ここで結べたら仕合せなのだが、事実はひどいことになったのである。
「今日はいろいろと、妾宅論やら、罹災の御経験、また高邁の文学観など豊富にお話を伺わせて戴き、有難う御座いました。あら、私としたことが、申し遅れまして、あの私は○○雑誌社の者ですが、今日のお話を訪問記事に致しまして、来月号の○○誌に掲載させて戴き度く思います。どうも長く御邪魔して失礼致しました。ではいずれ……。」
私は泥船に乗せられた狸よろしく、しばし茫然としてなすところを知らなかった。どうも最初からうまく話が軌道に乗ったと思ったら、相手は商売人じゃないか。