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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《蜘蛛の夢(くものゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 頁
」
「なに、罪は作らねえ……。女のくせに人殺しまでして、罪を作らねえが聞いて呆れらあ。よく考えて物をいえ。」
「人殺しはお前じゃあないか。」
その声が高くなったので、男は暗いなかにあたりを憚るように言った。
「おれはおめえを救ってやったのだ。」
「救ってくれたら、それでいいのさ。いつまで恩に着せることはないじゃないか。文句があるなら、千鳥へ行ってお言いよ。」
「べらぼうめ。うかうか千鳥なんぞへ面を出して、馬鹿息子と一緒に番屋へしょびかれて堪るものか。」
さっきからの押問答をぬすみ聴いて、庄吉は男が何者であるかを覚った。男は近所の裏長屋に住む虎七という独り者で、表向きは瓦屋の職人であるが、商売はそっちのけで、ぐれ歩いている札付のならずものである。女は何者であるか判らないが、ともかくもその事件が人殺しに関係しているらしいので、庄吉はおどろいた。殊に千鳥という名が彼の注意をひいた。
こうなっては聞き捨てにならないと思ったので、彼は早々に引っ返して親父の庄作に注進した。
かれらの家は渡し場の近所で、庄作は今や一合の寝酒を楽しんでいるところであったが、それを聞いて眉をよせた。