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しごとしてのにほんご

詩語としての日本語

折口 信夫

線上閱讀折口 信夫《詩語としての日本語(しごとしてのにほんご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,401 字 · 27 頁

青空文庫

(饐ゆ)など言った辛い聯想を持った言葉が始終使われた。そうかと思うと、近代感覚を以て、古語にない言葉を作ったのもある。運命、宿命などに「さだめ」と言う全く一度も使った事の無い語を創造した。西洋的な情熱を表す必要から、接吻なども、国語で表そうとして、早くから「くちづけ」と言い始めて来たが、此も無い言葉で、寧、「くちぶれ」とでも言うべきところであった。王朝まで溯る事の出来る用語例は、「くちをすふ」と言うのもあり、もっと適当な古今に通じた言い方は、「くちをよす」或は、「くちよせ」であった。こういう風に、古語の不穿鑿と、造語欲から出来たものもある。山脈を「やまなみ」と言う事は、後に短歌にも広く用いられるが、やはり詩が初めであろう。これも言葉通り山のならび、つづいている峯を言うので、山脈に当る言葉ではなかった。これは成程勘違いをしそうな言葉である。これと同じ意味に於て、特殊な外国語を使ったり、仏語や東洋語を用いたりして、詩語の範囲は拡げられた。象徴派以前からも此風は盛んであったが、有明・泣菫氏以後甚しくなった時期がある。言語の異郷趣味を狙った点に於て、古語も外国語も一つであった。