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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《豊島与志雄童話集(おつきさまのうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 頁
その晩は大変な騒ぎでありました。王様は櫓に上がって、大勢の家来達と酒宴をなされました。お城の門は表も裏もすっかり開け放されて、城下の人達が大勢はいって来ました。皆美しく着飾って、お城の庭で踊りを致しました。方々でいろいろな音楽も奏されました。晴れた空には月が澄みきっていました。燈火は一切ともすことが許されませんでした。お城全体が、月の光りと音楽と踊りといい香いとで湧き返るようでした。
王子はお守役の老女と二人で、そっと裏門から忍び出られました。そして老女を白樫の森の入口に待たせて、自分一人森の中にはいってゆかれました。
ところが例の空地の所まで行かれましても、誰も出て来ませんでした。
あたりはしいんとして、高い木の梢から月の光りが滴り落ちているきりでした。お城の中の賑やかな騒ぎが、遠くかすかにどよめいていました。
王子は長い間待っていられました。眼に涙をためて、「千草姫、私です!」とも叫ばれました。けれども姫も森の精も姿さえ見せませんでした。
とうとう王子は涙を拭きながら、思い諦めて戻ってゆかれました。森の入口で待っていた老女が何かたずねても、王子はただ悲しそうに頭を振られるのみでした。