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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,626 字 · 45 頁

青空文庫

七

登は頭をあげた。戸外で大きな物音と、女たちの喚きたてる声が、朝の静かな路地いっぱいに騒がしく聞えていた。

「あの人たちですよ」とおふみが云った、「きっとおきぬさんになにかしているんでしょう、いってとめてあげて下さいな」

登は立とうとしなかった。

「お願いですからとめにいって下さい」とおふみが熱心にせがんだ、「おきぬさんの罪じゃありません、あたしたちが悪かったんですから、どうか先生いってやって下さい」

七

夜はすっかり明けたが、濃い霧がおりていて、二、三間さきの見透しもつかなかった。路地の左右では、戸外で煮焚きをする者が多く、その火の側には男たちか、老婆の姿しか見えなかった。赤く霧を暈かしている火の側から、男たちは登に呼びかけ、笑いながら、向うで聞える騒ぎのほうへ肩をしゃくってみせた。

「かかあ連中のお慰みでさ、へっ」と男の一人は云った、「みんなこういうことになるのを待ってたんですからね、ああいう女はかかあ連中には仇がたきみてえなもんだ、うっちゃっときなせえ先生、へたにとめようとでもするとひっ掻かれますぜ」

「そうらしいな」登は立停った。

霧でわからないが、おきぬの家のあたりで、家財でも投げだしているらしい、器物の毀れる音がし、女たちが揉みあい喚きあっていた。