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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
線上閱讀夢野 久作《近世快人伝(きんせいかいじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 頁
感心した。又誰か保険に加入らんかな」
「おお。そういえばあの角屋の青柳喜平はまあだ三十四五にしかならんのに豚の様ブクブク肥えとる。百四五十斤位あるけに息が苦しいとこの間自分で云いよった。あの男なら四十位になると中風でコロッと死ぬかも知れんぜ」
「うむ。アイツの親爺も中気で死んどる。彼奴は保険向きに生れとる事をば、自分でも知らずにいるに違いない」
「貴様は何でも勧め上手じゃケニ一つ行て教えて来やい」
「ウン。よかろう。行て来う。今から行て来う。善は急げ……」
「今度は又木の三倍ぐらい掛けて来やい」
「ウン。飲みながら待っとれ。帰りに今少と、肴ば提げて来るけに……」
青柳喜平というのは当時から福岡の青物問屋でも一番の老舗で双水執流という昔風の柔道の家元で、武徳会の範士という、仁三郎には不似合いな八釜しい肩書附の親友であった。現、角屋の三右衛門氏の養父、現画伯、青柳喜兵衛氏の実父。若くして禅学に達し、聖福寺の東瀛禅師、建仁寺の黙雷和尚に参し、お土産に宝満山の石羅漢の包みを提げて行って京都の俥屋と、建仁寺内を驚かした。日露戦争の時の如き、福岡聯隊の依頼に応じて、露西亜の俘虜の中でも一番強力な暴れ者を猫の前の鼠の如くならしめたという怪力、怪術無双の変り者で、筆者ともかなり心安かったので自然この話を同氏の直話として洩れ聞いた訳