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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

同一の人間が同時に二ヵ所にいることはできず、同一のストライキが同時におさまりかつ盛んになることは不可能であるゆえ、いずれか一方は誤りに違いないが、距離が遠いとこれを鑑別すべき道がない。時間についてもこれと同じく、昨日や今日のことならば真偽を見分ける途もあるが、古い昔のことになると、あったことやらなかったことやら容易に分からぬ。長い間だれもが確かに生きていたと信じていた有名な人物が歴史家の研究の結果、実はいなかった人であると抹殺せられることさえしばしばある。窓の下を呼んで歩く号外売りの言うことが区々であるのを聞いて、今日起こった事件の報知でさえ、かくさまざまである以上は、昔の話などはとうてい当てになるものでないと言うて、手に持っていた歴史の書物を破り捨てた人があるというが、現在からへだたればへだたるほどその時に関する知識が不正確であるはやむをえない。すでにすんだ過去でさえそのとおりであるから、これからのちの未来に関して予想的知識の不確実であるべきはもとよりいうにおよばぬ。

かくのごとく人間の有する知識なるものは、自身に接近したところがいちばん確かであって、自身から遠ざかるにしたがいだんだんと不正確になり、一定の距離を超えれば全く皆無となる。