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しぜんかいのきょぎ
進化と人生(下)
丘 浅次郎
線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁
まして梅が香を桜の花に移し、柳の枝に咲かせるというような三方に充分なるごときはとうてい望まれぬことである。昔から天道は満つるを虧き、足らざるを補うというのはこの意味であろう。されば生活自衛の手段なる暴力と詐欺のごときもこの理に漏れず、詐欺の方法の充分に整うている動物は概して弱く、また弱い動物が概して詐欺を用いる。前の例にあげたごとき動物はいずれも弱いものばかりで、詐欺によらなければとうてい世に処する途のないものである。鯨のごとき強い者は少しも詐欺を行なうの必要はない。
前のたとえに引いた「二人の朋友と熊」という話の中にある男は、熊が死んだ物を食わぬことをつねから聞き知っていて、自分の腕力がとうてい熊にかなわぬことも明らかに知っていたゆえ、熊に出遇うたときに死んだ真似をして危険をのがれたのであるが、かりにかの男が熊よりも数倍も力が強くて、ひとつかみに熊をつぶしえたと仮定したならば、かれはいかに処置したであろうかと考えるに、彼は決して詐欺によらず暴力のほうをとっていたに違いない。自然界における動物の行為もこれと同様で、ある動物は暴力によって他を食うように他に食われぬようにとつとめ、ある動物は詐欺によって他を食うように他に食われぬようにつとめているのである。