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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

木が倒れても、家が焼けても、子供が怪我しても、犬が死んでもみな霊魂がしたことにすれば、とにかく説明はつく。特にそれがもしも亡者が生きていたならば、必ずかくしたであろうと思われることである場合には、いっそうもっともらしく聞える。たとえば酒飲みの老爺が死んだ日に、酒樽の栓が自然にはずれて酒があふれ出したとか、意地の悪い姑が死んで七日目に棚の徳利が落ちて嫁の頭に当たったとかすれば、いかにも霊魂がいまだ家の中に留っているごとくに感じ、かようなことがたびかさなれば、霊魂はいよいよあるものに違いないと確信するにいたる。一年じゅう、毎日晴天と予報しても五割以上は適中するというが、偶然の適中ということは、もとよりいくらもあるべきはずゆえ、もしもはずれたほうを度外視し、あたったほうだけを数え上げれば、あたかも立派な証拠のごとくに見える。かような次第で霊魂なるものが存在するということはすでに野蛮時代から一般に信ぜられ、人が死んでも霊魂は残ると信ずる以上は、それに基づいたいろいろの儀式や習慣が生ずる。目にも見えず呼んでも答えぬところから、霊魂はよほどの遠国に住んでいるもので、死ねばそこまでゆかねばならぬと考えるゆえ、死人には旅装束をさせ、杖を持たせ、草鞋をはかせ、若干の旅費まで添えて出立させる。