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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,251 字 · 39 頁

青空文庫

藤吉は、その、一列にならんでいる梅の家連中を、覗って、例の眇で、右から左へ、左から右へ、二、三度じっと、撫でるように見渡していたが、やがて、口の隅から呟くように、

「踊りてえものは、難かしゅうごわしょうな。」

一応、調べられる――と思っていたのが、藪から棒に、この問いだったので、女たちは、変に拍子抜けがして、いそいで互いに顔を見合った。金魚のように、長い袂をゆすって、笑いかけた女もあった。ひとり、少し年長らしいのが、

「はあ。でも、親分さんなどは、お器用でいらっしゃいますから――。」

「はい。おいらだってこれで、まんざらでもねえのさ。」

こういって藤吉は、やにわに、妙な恰好に両足を動かして、踊りの身振りのようなことをして見せた。

梅の家連は、武右衛門の死を忘れて、きゃっきゃっと笑いこけて奥へ駈けこんで行くし、幸七も、ぷっとふきだしたが、本人の藤吉と彦兵衛だけは、にこりともしなかった。

七

「円枝さんは、先に引っ込んだ。おこよさんは、ここで、紋之助師匠と話しこんでいなすったのだね。」

藤吉は、まだそこにぼんやり立っていた円枝とおこよへ、声をかけた。