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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁

青空文庫

タルのふたがとれていましたので、もしタルの中にいるのではないかと、のぞいて見ましたけれど、タルの中は、酒も水もはいっていない、からっぽでした。

「あっ、なにをするんです……。」

と、いおうとしたとき、大きな手が、賢吉君の口をぐっと、おさえてしまいました。もがこうとしてももうひとつの手が、からだをだきしめているので、どうすることもできません。

水夫は、賢吉君をだきあげて、なんのくもなく、その大ダルの中へおしこみ、上からふたをして、ポケットから、とりだしたクギとカナヅチで、コンコンと、うちつけてしまいました。

あっというまのできごとでした。船の人たちは、みんな潜水作業の方に集まっているので、だれも気づいたものはありません。それにしても、この水夫は、いったい何者なのでしょう。賢吉君をタルづめにして、どうしようというのでしょう。

もしかしたら、この水夫は、鉄の人魚の怪人団の、まわし者だったのではないでしょうか。ハヤブサ丸が、大阪を出るときから、水夫にばけて、乗りこんでいたのではないでしょうか。

水夫は、そこにおいてあった長いロープを、タルにまきつけてかたくむすび、タルをもちあげると、船尾のふなばたまではこびました。