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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十三)青い帯(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,244 字 · 231 頁

青空文庫

「親分、変な野郎ですよ。縛り上げるといきなり泣き出して、五十両やるから見遁してくれ――って言やがる」

「どうせそんなことだろう。どれ面を見せろ」

平次の差出した提灯に照らされたのは、ねんねこ半纏を着て耄碌頭巾を冠り、浅黄の股引をはいた老人姿ですが、顔を見るとまだほんの三十前後。――毛虫眉の顎の張った少し憎体な男です。

「お前は音松じゃないか」

この顔はガラッ八の方がよく知っております。飯田町に住んでいるゴミのような安やくざ音松。これが江戸中を騒がした、凄い辻斬の本人とはどうしても思われません。

「あっしじゃありませんよ、親分」

音松は本当に泣き出しそうでした。

その間に平次は四方の様子を念入りに調べます。ツイ三四間先には死骸が一つ、中年者の武家姿ですが、右手を柄頭に掛けたまま、大袈裟に斬られて、縡切れております。

「凄い手際だな、八」

平次は八五郎を顧みました。

重ね着をした人間を、たった一と太刀で、これだけ斬り下げるのは、据物斬の名人でなければなりません。

「この野郎でしょうか、親分」

「気の毒だが違ったよ」

「ヘエ――」

「せっかくの手柄をフイにするようだが、匕首でこれだけ斬れるわけはない」