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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十三)青い帯(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,244 字 · 231 頁
五
治三郎の言葉はようやくほぐれました。
「お由良は内証にしておいてくれと、堅く口止めしましたが、実は明日にもお由良を引取って、内祝言するはずでございました。店の者にも内々申し聞かせ、出入りの酒屋、魚屋、鳶頭にも話して、内々仕度をしていると、あの騒ぎでございます。私はもう、どうしていいかこの先、生きて行く張合いもないような心持でございます」
「…………」
治三郎の涙声になった愚痴を聴きながら、平次はチラリとガラッ八に眼配せしました。治三郎の言ったことを、店の者や出入りの商人たちに確かめさせる心算でしょう。ガラッ八は早くもその意嚮を察すると、よく馴れた猟犬のように素早く座をはずして、どこかへ行ってしまったのです。
「誰があんな惨たらしいことをしたかわかりませんが、どうか、敵を討って下さい。お願いでございます、親分」
「お由良を殺したのは誰だろう、見当くらいは付かないものかな」
平次は脈を引きました。
「なにぶんあの通り、人気者のお由良でございましたから――」
治三郎にも見当は付かない様子です。
「ゆうべはお由良に逢わなかったのか」
「逢いません、――あと二三日の辛抱で、ここへ来て貰えると思いましたので、宵からこの部屋に引籠って、帳面の調べをいたしました」