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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

「で?」

平次は次を促しました。

「それからもう一つ、殺されたお皆はタチの悪い女で、店中の者は皆んな怨んでいたが、とりわけお皆を怨む者が一人あるはずだ。俺の口からは言いにくいが、親分が聴き出す分にはわけはあるまい」

「有難うございました。お蔭で本当の下手人の当りも付くでしょう。まだ外にお心当りのことがあったら、遠慮なくおっしゃって下さい。岡っ引を稼業にしていても、なかなかそこまでは目が届くものじゃございません」

「いや、そう褒められると極りが悪いが」

寺本山平はカラカラと笑って逃げ出すようにそこを去りました。

その後ろ姿を見送って、

「八」

「ヘエ――」

平次は八五郎を小手招ぎしました。

「どうだ、驚いたろう。素人衆にも、あんなのがいるぜ」

「いよいよ十手捕縄返上したくなりますよ、親分」

八五郎は二つ三つ首を捻って見せました。

「足跡はあの寺本さんの言う通り、内から出て木戸まで行って帰ったのだ。往ったのと来たのが判れば、ひどい内輪もよく判る」

平次は中庭の足跡を指さします。

「庭石の苔がひどく剥げてますよ」

「それを今俺も考えているんだ。木戸まで踏石が七つ、よくついた石苔が損んでいるのはどうしたわけだ」