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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

「親分、北冥の魚でしょう。鯉でも鮒でも構わないが、ここに魚がありさえすりゃ、三万両と転げ込むんだが、無住になった寺方じゃ、鰯の頭もねえ――」

「黙らないか、八」

平次は八五郎の饒舌を封じて、凝と庵室の中を見廻しました。

「だって親分、ここに魚なんかいるわけはないじゃありませんか」

「あれは何だ」

平次の指は真っ直ぐに、仏壇の前に据えた禿ちょろの木魚を指さしているのでした。

「なるほど木魚とはよく付けた――魚に違えねエ」

八五郎は飛んで木魚を押えました。こいつが下手人ででもあるかの意気込みですが、禿ちょろの木魚は八五郎が考えた業をする代物とは思えません。

「木魚の中を見るんだ」

「ヘエー」

引っくり返すとカラカラと鳴って、やがて転がり出たのは、丈夫そうな鍵です。

「それをどうするんで、親分」

「南冥へ行くんだ。天池ともいう。――そこに鵬という鳥が行水を使っている」

その時は、もう上州屋の家族が全部そこに集まって、銭形平次の動きを好奇と、不安とで見詰めておりました。

平次はその人達の視線に送られて、上州屋の離室――ゆうべ勇次郎が殺された部屋の前まで行くと、ささやかな池のほとりに据えた、不似合に大きな青銅の水盤に気が付きました。