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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,230 字 · 280 頁

青空文庫

主人は寝込んだまま、一刀の下にやられたらしく、脇差が喉を貫き、蒲団までも突き抜けて、畳へ切っ尖が達しております。

「大変な力だね、親分」

八五郎はちょっとその柄に触って舌を巻きました。

「まさか槌で叩き込んだんじゃあるまいな。柄頭を見てくれ」

と平次。

「なんともありませんよ」

金具には髪の毛ほどの疵もないところを見ると、やはり馬乗りになって力任せに突き通したものでしょう。

「青梅綿の蒲団を二枚通すのはえらい力だな」

「こいつは天狗でなきゃ怨霊ですぜ、親分」

「馬鹿なことを言うな」

そうでなくてさえ、この春の火事には、延焼して来る火の手を眺めながら、大金の掛っている十幾人の妓に逃げ出されることを惧れ、納戸に入れて鍵をかけたばかりに、三人まで焼け死ぬような無慈悲なことをして、世間から鬼のように思われていた佐野喜の弥八です。怨霊に殺されたなどという噂が立ったら、その日のうちに瓦版が飛んで、来月は怪談芝居の筋書になるでしょう。

「戸締りは念入りだな」

「ヘエ――、主人は大層やかましく、申しました」

と万次郎。

平次は立って雨戸の工合を見ましたが、何の変化もありません。