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くにさだえがく

鏡花短篇集 川村二郎編

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《鏡花短篇集 川村二郎編(くにさだえがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,644 字 · 40 頁

青空文庫

待て、希くは兎でありたい。二股坂の狸は恐れる。

いや、こうも、他愛のない事を考えるのも、思出すのも、小北の許へ行くにつけて、人は知らず、自分で気が咎める己が心を、我とさあらぬ方へ紛らそうとしたのであった。

さて、この辻から、以前織次の家のあった、某……町の方へ、大手筋を真直に折れて、一丁ばかり行った処に、小北の家がある。

両側に軒の並んだ町ながら、この小北の向側だけ、一軒づもりポカリと抜けた、一町内の用心水の水溜で、石畳みは強勢でも、緑晶色の大溝になっている。

向うの溝から鰌にょろり、こちらの溝から鰌にょろり、と饒舌るのは、けだしこの水溜からはじまった事であろう、と夏の夜店へ行帰りに、織次は独りでそう考えたもので。

同一早饒舌りの中に、茶釜雨合羽と言うのがある。トあたかもこの溝の左角が、合羽屋、は面白い。……まだこの時も、渋紙の暖簾が懸った。

折から人通りが二、三人――中の一人が、彼の前を行過ぎて、フト見返って、またひょいひょいと尻軽に歩行出した時、織次は帽子の庇を下げたが、瞳を屹と、溝の前から、件の小北の店を透かした。

此処にまた立留って、少時猶予っていたのである。