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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《陰獣(いんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 頁
四
四
翌日私は、書きかけの原稿をそのままにして置いて、桜木町へ出掛け、近所の女中だとか出入商人などをつかまえて、色々と春泥一家のことを聞き廻って見たが、本田の云ったことが決して嘘でなかったことを確めた以上には、春泥の其後の行衛については何事も分らなかった。あの辺は、小さな門などのある中流住宅が多いので、隣同志でも、裏長屋の様に話合うことはなく、行先を告げずに引越して行ったという位のことしか、誰も知らなかった。無論大江春泥の表札など出していないので、彼が有名な小説家だと知っている人もなかった。トラックを持って荷物を取りに来た引越屋さえ、どこの店だか分らないので、私は空しく帰る外はなかった。
外に方法もないので、私は急ぎの原稿を書くひまひまには、毎日の様に本田に電話をかけて、探索の模様を聞くのだが、一向これという手掛りもないらしく、五日六日と日がたって行った。そして、私達がそんなことをしている間に、春泥の方では彼の執念深い企らみを、着々と進めていたのであった。
ある日小山田静子から私の宿へ電話がかかって、大変心配なことが出来たから、一度御出でが願い度い。