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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《陰獣(いんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 頁
三
女の腐った様な猜疑に満ちた繰言で変態読者をやんやと云わせて得意がっている彼が無性に癪に触っていた。だから、あわよくば、彼のこの隠険な不正行為をあばいて、吠面をかかせてやりたいものだとさえ思っていた。私は大江春泥の行衛を探すことが、あんなに難しかろうとは、まるで予想していなかったのだ。
三
大江春泥は彼の手紙にもある通り今から四年ばかり前、商売違いの畑から突如として現われた探偵小説家であった。彼が処女作を発表すると、当時日本人の書いた探偵小説というものが殆どなかった読書界は、物珍らしさに非常な喝采を送った。大げさに云えば彼は一躍して読物界の寵児になってしまったのだ。彼は非常に寡作ではあったが、それでも色々な新聞雑誌に次々と新しい小説を発表して行った。それは一つ一つ、血みどろで、隠険で、邪悪で、一読肌に粟を生じる体の、無気味ないまわしいものばかりであったが、それが却って読者を惹きつける魅力となり、彼の人気は仲々衰えなかった。
私も殆ど彼と同時位に、従来の少年少女小説から探偵小説の方へ鞍替えしたのであったが、そして人の少い探偵小説界では、相当名前を知られる様になったのであるが、大江春泥と私とは、作風が正反対と云ってもいい程違っていた。