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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《雪の上の霜(ゆきのうえのしも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 頁

青空文庫

ところがそうではなかった、馬子たちは平身低頭しながら駄賃を呉れと頼んでいる。

「二里以上もお乗せ申したんで、駄賃を頂かなければ、こんにち女房子に粥を啜らせることもできません、どうかおからかいなさらずに、定りだけ頂かしてお呉んなさい」

権六がそう云うと、他の四人もいっしょに、頭を下げて懇願した。

「いかんいかん、だめだ」

侍の一人が唾を吐いた。みんな同じ年ごろだが、その侍はいちばん老けていて二十七八にみえる。大身の者の子だろう、秀でた相貌だし、着ている物もりっぱだった。

「初めに駄賃を定めながら、酒手を余分にねだるとはふといやつだ、きさまたちは、いつもそうやって、旅人たちに迷惑をかけているのだろう」

「迷惑なんてとんでもない、酒手というのはわたし共のしきたりで」

「黙れこいつ、酒手を当然のしきたりなどと云うからは、なおさら勘弁ができない、街道往来の諸人のためだ、おのれ斬って呉れるぞ」

その侍は刀を抜いた。伊兵衛には威しということはわかるが、これまでのゆきがかり上、馬子たちは仰天し、思わず左右へとびのいた。そのとき、伊兵衛が呼びかけた。

「やあ土橋の権六さんじゃありませんか、どうしました」