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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《雪(ゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 頁

青空文庫

二

そしてその下に入れて置いた硝子板を時々引出して顕微鏡で覗いて見たが、勿論何も見えはしなかった。こんなことをしているうちにすっかり春になり、雪の研究の第一年は有耶無耶の中に過ぎてしまった。その後毎年雪の研究を続けていたものの、雪を人工で作る試みとしては余り積極的なことはしなかった。それというのはどうして手をつけてよいか見当が付かなかったのである。しかし十勝岳へ出かける度に、毎日のように顕微鏡で雪を覗き暮しているうちにも、これほど美しいものが文字通り無数にあってしかも殆ど誰の目にも止らずに消えてゆくのが勿体ないような気が始終していた。そして実験室の中で何時でもこのような結晶が自由に出来たなら、雪の成因の研究などという問題をはなれても随分楽しいものであろうと考えていた。

始終そういう気持を持ちながら、天然の雪とそれに直接の関係がある霜とを見ていたら、何時の間にかすらすらと雪の人工製作への道が開けて来たのである。その最初の手掛りとなったものは十勝の山小屋の周囲で見た各種の霜の結晶であった。

二

十勝岳の白銀荘附近では、真冬の間の気温は、零下十度乃至十五度附近を上下し、零度以上になることは先ずない。