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かいじんじゅうまんかん
魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編(かいじんじゅうまんかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,671 字 · 55 頁
受附の盆の上には名刺が堆かく山をなしていた。誰を見ても気が立った顔をしている店員と眼や頤で会釈しつゝ奥へ行くと、思い/\に火鉢を央に陣取ってる群が其処にも此処にも団欒していた。みんなソワ/\して、沈着いてる顔は一人も無かった。且各自が囲んでる火鉢は何処からか借りて来たと見えて、どれも皆看馴れないものばかりだ。小汚ない古椅子が五六脚あるぎり、思い/\に麦酒の箱や普請小屋の踏台に腰を掛け、中には始終腰を浮かして立ったり座ったりしていた。誰も皆気が立っていた。誰も皆ワサ/\していた。誰も皆ガチ/\していた。誰も皆元気付いてるようで何処か陰気な淋しい顔をしていた。
大抵は目眩るしいようにセカ/\往ったり来たりして、人と人とが衝突りそうだ。用あり気に俄に駈出したかと思うと、二タ足三足で復た戸ってボンヤリしているものもあった。元気に噪いで喋べり捲ってるかと思うと、笑声の下から歎息を吐くものもあった。空気が動揺していた。塵埃が舞っていた。焦臭い臭いが充満していた。
無難に持出した帳場デスクの前に重役連が集まっていた。何れも外套帽子のまゝの下駄がけであった。重役の一人の繃帯が誰の目にも着くので直ぐ訊かれるが、火事場の怪我で無いと聞くと誰も皆安心した顔をして、何の病気だと折返して訊くものも無かった。