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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
啓之助の想像は楽しかった。
その時であった。
植込みを隔てた向うの潜り門に、空気のうごめきを感じて、有村が神経を研がしたのは。
「今……」
三位卿の様子が剃刀のように澄んだので、啓之助、
「何でございますか」
描いていた空想を散らして、その人の眼を見た。
「……鈴が鳴ったようだが」
「庭の客門には銅鈴がついておりました」
「誰かそこから前栽の内へ入ってきたのではなかろうか」
「探ってみましょう」
「ウム」
啓之助はすぐに立った。
数寄屋の虫籠窓へ顔を寄せ、しばらく外を探っていたが、庭木に妨げられるので、縁へ立って行くと、
「しずかに」
と有村が注意を送った。
「は」
白足袋に辷りそうな廊下、酔いでもさますふうを粧いながら母屋のほうをうかがってゆくと、その目の前へ、廉のような灯明りの縞がゆらゆらとうごいて。
「あ――もし」
と、簾戸を立てた部屋の内から、
「森様じゃございませんか」
とお久良の影が透いて見える。
啓之助はちょっと戸まどいをして、
「お内儀か、船の時刻は、まだなのであろうか」
「刻限がまいりましたら、お座敷へお迎えにまいりますはずなので」
「さようであったな」