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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

と、神ならぬ凡夫、

「こう寄んねエな……」と女の肩へ手を廻した。

お米は顔をそむけて、

「あ、およし」

と、宅助の青ひげを避けるようにした。

「なぜエ」

「まだ動悸が鳴っていて息苦しいンだから……後生……手を離しておくれ、この手を」

頼むようにいえばいうほど、宅助の腕は女を苦しめた。お米は腹が立った。人が方便に白い歯を見せていれば――。

それに、嘘ではなく、仮借のない下司男の力に、心臓がしめられるようだった。

「およしといったら……もう船の時刻も来ているのじゃないか」

「まだ大丈夫だッていうことよ」

「ま、くどい!」

後ろの荷物へ押しつけられて、ズズと背中を辷らせたかと思うと――

どうしたのか? 宅助。

「うッ! ……」

と突然、妙な呻き声をふくみ、それと一緒に、激しい痙攣を起こして四肢を硬直させた。

「宅助ッ……宅助や……」

お米は、自分の首にからみついている彼の手が、肌へ爪を立つばかりに、ブルブルと慄えてきたので、色を失った。

「ど、どうしたンだえ※(感嘆符疑問符、1-8-78) 宅助や……あれ……宅助ッてば!」

一本一本指をもいで、ソウと体を起こしてみた。

と――どうだろう! 眉をしかめた形相を青蝋のような色に変らせて、グタッと、お米の肩へもたれてくる。