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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

もう一つのつづらがポンと開いて、咲きひらいた花のように、

「弦之丞様――」

と、お綱の顔がニッコリと笑う。

「しッ――」

と、手を振って耳をすます。

誰かの跫音でもして来たか、ふたりの影は、つづらの蓋と一緒に吸われたように消え込んだ……。

そこへ、風のようにはいってきたのは、あの編笠の侍だった。

うどん屋を捕まえて、ようよう子供の居所を聞いてきたと見え、一本槍に小屋の隅へ駈けこみ、藁にくるまって正体なく寝入っていた子供に何かささやくと、また、風のごとく出て行った。

その跫音に、

「ウウム……」と、宅助は動きだした。

そして、傷口をおさえながら、小屋の羽目板につかまって立ち上がると、その足にからんで、お米も必死な力で、よろよろと腰を切った……。

*     *     *

二百石船の舳に立って、水夫頭が貝を吹いた。

五刻半だ。

にわかに、埋地の闇や水明りの船岸に、ワラワラと人影がうごき出す中を、一散に、船待小屋へ目がけてきたのは、竹屋三位卿。

「つづらはここか」

ついてきた原士を顧みていうと、

「は、四国屋の若者が、たしかに最前、ここへ運び入れましたはず」