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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「早いな、話は」

「とにかく、吉運到来だよ」

「そうかしら」

「オイ、一角」

「え」

「そうかしらって、お前だって、噂にきけば、たいそういい運が向いてきたというじゃねエか」

「ウム、加増のお墨付をいただいた」

「不足なのか」

「過分さ」

「じゃあ」

少し話がこじれてきた。周馬が代って、

「おれたちが仕官したり帰参するのが気にいらないのか」

とひがんでいう。

「ばかをいえ!」

と一角は傲岸になった。

「お互いに立身出世の緒口がついたのを、誰が気にいらない奴がある」

「それならよろこんでしかるべきじゃないか」

「だからよろこんでおるではないか」

「ちッ、まずい面をしているくせに」

「ほかに屈託があるからだ」

「なんだ?」

「おれは少し気になってきた」

と一角はまた首をたれて考えこんでしまった。

「どうしたっていうんだ。天堂一角にも似合わん憂鬱じゃないか。今、蜂須賀家もおれたちも、吉兆と吉運にめぐまれているのに」

「だからよ、その夢が凶く、裏切られてきやしないかと心配しているのだ」

「妙なことをいう……」

解せない。

ふたりは眉をひそめて一角を見た。一角は何か真剣になって苦念していた。

剽悍で一徹者、何ごとにも荒けずりな性格を見せる天堂が、妙に楽しまぬ色で、考えこんでいるので、周馬と孫兵衛がだんだんたずねると、やっと、口を開いた。