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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
声いッぱい、あなたの雲表へ、お綱は呼びかけてみたかった。
だが、直前に見えるようでも、まだそこへは数里、それも、これからはいっそう嶮しい峡谷や岩脈に阻まれている距離がある。――でもお綱には、ここから呼べば、剣山の山牢から、オオと、返辞が木魂してくるような気がするのだった。
「では、大勘も源次も、どうか、ここまでとして、後へ帰ってくれるように」
弦之丞は、笠ぐるみ頭を下げて、二人へ礼をのべ、袖を別つことを宣した。
「気の毒な……」と、弦之丞はふと暗くなった。さだめしこの者たちは、後で代官所の追捕に趁い廻されなければなるまい――。
「じゃ……どうぞ御堅固に」
と大勘も別れをつげたが、弦之丞のすまぬ色を見て、言い足した。
「お案じ下さいますな。あっしと源次は、これから土佐境の港へ出て、そこから抜荷屋の仲間をたのみ、しばらくどこかの島でほとぼりをさましております。そのうちには、四国屋のお家様にお目にかかって、何とかいたすつもり、そこは手に職のあるありがたさで、尺金一本さし込んでいれば、どこの国にも天道様は照っております」
なおいろいろと、山へかかった場合の注意を残して、大勘と源次は後へ取って返した。