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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

それなり宅助も黙りこくッてしまうし、お米も寝床にジッと固くなっているらしい。もう両方で、寝息を探りあうことは止めた。そしてただお米の心臓だけが暗い中でドットと鳴ってじれていた。

翌日は、どんな顔を見あわすかと思われたが、宅助もお米も、気まずい話にはふれなかった。

昼を過ぎてから、お米は、叔父の半斎の所へ手紙を書いた。それを飛脚屋へ頼みながら、気晴しに歩いてこようか――と、今日はお米のほうから宅助をうながして外へ出た。

「ソロソロ機嫌を取ってきやがったな」

と肚の中で宅助は、こうあるのが本当だとうなずいた。宿屋を出るとその調子で、じきに言葉もぞんざいに、

「お米さん、大津絵師の半斎へ、なんていう手紙を書いたんで?」と、糺してきた。

「きのう私がいっていた通りさ」

「はてね。忘れてしまったが」

「とにかく、叔父さんに相談があるから、茗荷屋まで、来て貰いたいという意味をね」

「なるほど、そこで叔父貴に事情を話して、川長の店へとりなして貰おうというんですか。だが、その相談の時にゃ、宅助も立会いますぜ」

「いいどころじゃない。どうせ、家の方へ得心して貰ったら、私の手道具や着物まで、スッカリ荷物にして阿波へ送ろうという話なのだから」