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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

飴売り傀儡師

「? ……」

眉をよせて立ち止まった菅笠。

かれは、所司代への密使をかねて、江戸南町奉行所の命をうけ、お綱の人相書を携えてその逮捕に上方へ来た、敏腕の与力、中西弥惣兵衛である。

京奉行所の諒解をえて、弥惣兵衛は、人相書の女スリを召捕るため、先頃から京大阪の間にその手がかりを嗅ぎ廻っていた。

今、挙動の妙な非人を見ていた弥惣兵衛は、

「あいつ、ふところに何か持っているな」

と、顎をすくっていった。

飴売り傀儡師

さきごろ、下加茂の茶荘へふたりの密使が訪れてきて以来、次いで、二条城、或いは所司代の千本屋敷へ、江戸からの密書密使のたえまがない。

何か起こるぞ。

そういう空気が京都に濃くなった。

重なる役人は帰宅をとめられ、目を赤くして、固く口を結んでいた。

「中西弥惣兵衛と申す方から御急報でござります」

連日の多忙に疲れている下役の者が、こういって、所司代左京之介の役室の次の間へ、一封の書状を置いた。

祐筆がうけとって近侍にわたす。近侍から左京之介の手へ。

かれは衝立を隔てて、常木鴻山と何か低声で密談していた。

「――中西?」

いつぞや茶荘へ人相書を取りに戻った、与力のひとりを思い浮かべながら封を切った。