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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

しかし。

かれがそこを尋ねあてた時にはもう家主の男が、中の塵を掃きだして、戸を締めにかかっていた。

訊くと。

堀田伊太夫は、午ごろ、にわかに三挺の駕を雇ってきて、家を明け渡し、江戸へ帰ったという話。

禅定寺までは半日の道のり、周馬の手紙に明日とあるので、さまでに急がなかった不覚を悔いて、鴻山は、大津へ出る本街道を逆に醍醐から、西笠取のほうへ、それらしい影を血眼でさがして行った。

…………

構えにふさわしくない所司代公用の赤状筥が、桃谷の目明し万吉の門口へ届いた。

「なんであろう?」

と、お吉は不安に思いながら、それを持って中二階へ上がってゆく。

ふりかえってみれば、剣山の険、岡崎の船関、鳴門の渦潮――、よくも、ここまで戻ってこられたものと、いまさら、自身さえ不思議な心地がして、お綱はそこの中二階にいるのであった。

周馬の身辺をつけ廻しつ、めったに、家にいることのない万吉と弦之丞、ふたりもちょうどいあわせて、

「おお、どこから?」

あわただしく状筥をひらきあった。

吉報!

その刹那のお綱の笑顔。弦之丞の鬱雲のはれてみえる眉。万吉のよろこびよう。それは何にたとえようもない。