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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

これも高津のお宮のおひきあわせでございましょう」

「では、まだ、阿波へは?」

「はい、船の都合で、少し帰りが遅れておりまする」

「とおっしゃると、なんぞ次によい便船でもお待ちなさるのでございますか」

「いいえ、手前どもの持ち船で、御城下へゆく積み荷の整い次第に、港を立つ都合になりますので」

「そうですか――」と深くうなずいて、

「では、四国屋という、お店の持ち船でござんすね」

と、それに気を惹かれて、連れの浪人と目を見あわせたまま、ジッと考えている間に、その浪人の編笠のうちを覗いた宅助が、あっ、とびっくりして走りかけた。

――と思うと、浪人の、黒奉書の片袖が、乙鳥の羽のようにひるがえって、真っ白い腕に電撃の速度がついた。

脾腹へ当身! たった一突き。

「ウウム――」というと、不運な宅助、またここでも、駈けだすはずみを横につけて、向うの草むらへ、逆とんぼを打って気絶した。

宅助が気を失ったのを見すましてから、侍は、おもむろに、突きだしていた拳を納め、その指先を笠べりにかけて、

「――不作法。平に」

と、軽く、またにこやかに、お久良と新吉へ、初めての会釈をする。そして、静かに、笠を払った。