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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

それに混って雀焼屋があります。それはこの土地の名物です。小鮒の腹を裂いて裏返し、竹の小串に刺して附焼にしたもので、極く小さいのは幾つも並べて横に刺すので、それは横刺ともいいます。鮒は近在で捕れるのでしょう、大きな桶に一杯入れたのが重ねてあって、俎板を前に、若い男がいつも串刺に忙しそうです。

野菜市場のしにせに美しい娘があって、長く患っていて、幾人もの医者にかかっても直らぬとのことで、最後に父に診察してもらいたいと、そこのかかりつけの医者から頼んで来ました。父は新しい病家などは好みませんけれど、人力車で迎いに来たので行きました。やがて帰られたので、「何病でした」と誰もが聞きます。美しい娘だったからです。父は、「いや、すぐ直るだろう」と何気ない様子でした。「呼吸器だろう」などと噂をしましたが、間もなく全快して、病家では非常に喜んで、手厚い謝礼をしました。その貰い物で賑かな夕食の時に、兄が、「何病でした」と問いますと、父は笑って、「なに、長襦袢を一枚むだにしたのさ」といわれたばかりでした。

その美しい娘というのは、虚弱で下剤の利かぬ体質だったために秘結に苦しんでいましたが、灌腸を嫌うので治療の仕様もなくて、どの医者も手を引きましたので、父は家人に話して、長襦袢に穴をあけて、それで灌腸器を挿入したところから快通