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くろふねぜんご

黒船前後・志士と経済他十六篇

服部 之総

線上閱讀服部 之総《黒船前後・志士と経済他十六篇(くろふねぜんご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,901 字 · 247 頁

青空文庫

考えてみれば、あながちこれは錯覚とのみいいすてることでないようだ。函館は私の旅程の最後にあてられているために、船から汽車にのりかえて、窓から見棄てる函館平野の風景は、農家のたたずまいといい、耕地整理の行届き不行届きのむらといい、東北のあちこちとほとんど変るところはない。駒ヶ岳をめぐる未開墾の火山灰地帯と大沼の風光をつきぬけて、噴火湾岸の森からオシャマンベまで、さしむき熱海から藤沢までの天地自然の夕まぐれを、同じく東北風の貧寒たる人事風物が点綴するのである。あとで聞いた話だが、かつてこの沿岸をにぎわした海の幸、いわしもにしんも、昭和十三、四年いらいよりつかなくなって、漁師のせがれを一季二万円で十勝の農家に出稼ぎさせるような昨今の状況だという。松前方面をいれたこの「道南」一帯は、徳川時代からのふるい植民地帯である。人文地理上東北と同じ地帯にいれてよいわけだろう。学芸大学函館分校の学生諸君と北海道最後の夜をおそくまでともにしたとき、思いついて私は一人一人の家系についてきいてみた。すると、渡道後四代、初代は石川県人というのが二、三名いたが、何代になるかわからない、どこからきたかおぼえていない、と答えた人数のほうが多かった。