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くろふねぜんご
黒船前後・志士と経済他十六篇
服部 之総
線上閱讀服部 之総《黒船前後・志士と経済他十六篇(くろふねぜんご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,901 字 · 247 頁
みぞれまじりの夜の嵐をついて、往年の摂政宮行啓を記念する檜造りの公会堂の、広さにくらべて座席の少い会場にほぼいっぱいの学生と市民があつまった。
余市では私は話すよりも学ぶ時間をゆっくりともった。旭川藤井家で御馳走になった「秋味」――鮭のしゅん――をいつまでも私は忘れないのだが、はからずもここ余市の道立水産試験場でまる一日この方面でからっぽの私の頭を、みたすことができたことはしあわせであった。夜ふけの公民館で名物のリンゴ・ウィスキーをのみわかれて、翌朝私は函館学芸大学の諸君とともに五稜廓に立っていた。
久保栄『五稜廓血書』の筋書はあらかた忘れてしまっても、この五稜廓に立つ感情は、一九五二年まで時機をおくらせただけのふかさはあった。
安政二年乙卯夏、仙台鳳谷小野寺謙刊行の蝦夷地図をみると、太平洋岸の内地からは下北半島の突端大畑港と佐井港から函館へ、日本海岸の航路は津軽半島の北端ミウマヤ港から松前(福山)に達する。そのとき内地と蝦夷を結ぶメインルートが大阪を起点として瀬戸内海、日本海沿岸を経て松前に達する日本海航路だったことはいうまでもない。江差追分から安来節までの港々の民謡に一抹の基調が通っているのはそのためである。