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くろふねぜんご
黒船前後・志士と経済他十六篇
服部 之総
線上閱讀服部 之総《黒船前後・志士と経済他十六篇(くろふねぜんご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,901 字 · 247 頁
先妻信子のいじらしさを、秘かに姪の前でもらしたのもこの頃であったろう。
近所では長州から金が来るのだと噂をし、かかわり合いになるのを怖れて小心な劉石舟は旅に出たほどだが、雲浜が名うての貧乏を一躍放棄できたのは、けっして噂のごとく何らか秘密な、陰謀政治的な収入によるものではなかった。それどころかなかんずく公正な、産業利潤にそれは源泉した。門人行方千三郎は安政四年の雲浜を叙して「時に梅田は昔日の貧儒にあらず、大和と長州との物産を交易し、経済の途を開き、大いに為す所あらんと欲し、門戸を張って天下の有志を待てり」と書いているが、安政三年の秋以来、雲浜が国事奔走にあわせて諸地方新興産業のための内地市場開拓――内地貿易のあっせんに尽したことは、京阪地方と長州、大和と長州、大和と北陸筋まで、諸方面にわたった。しかもそれは、けっして偶然でなかった。
雲浜が物産貿易の方面へいよいよ乗出したのは、安政三年秋からだったが、それ以前の貧儒時代から、彼には幾人かの地方産商業家の門弟知友があった。たとえば洛外川島村の門弟山口薫次郎は郷士で豪農でまた商人であり、大津時代には豪商鍵屋五兵衛が門人になっており、大和五条の木綿問屋下辻又七とも盟友、備中連島の名家で豪農で豪商だった三宅定太郎とは安政三年春以来兄弟盃の間柄、等々といったふう。