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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《いさましい話(いさましいはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 頁

青空文庫

それが悪感情でなかったことはその翌日すぐ訪ねて来たのと、そのときの好意をひそめたようすが証明していた。単に好意だけではなく、そこにはもうひとつ深い意味さえ感じられたのである。

それは求婚でないにしても、求婚を期待し、それを受ける意志のあることを、示すものと思えた。

――あのひとならいい妻になって呉れるだろう、平安な温かい家庭ができるに違いない。それだけなら望ましいひとだが。

玄一郎は茶の招きを断わった。

その三日ほどあと、定日の非番に津田庄左衛門が訪ねて来た。きれいに晴れた日で、あけてある窓からいっぱいに陽がさしこみ、火桶もいらないくらい客間は暖たかかった。

庇から落ちる雪解の雨垂れがきらきらと美しく光っては、あまおちの小石を賑やかに叩いていた。津田は窓に倚って暫く話していたが、ふと萩原くめのことを云いだした。

「あの娘はわるくはないと思うのだが、お気にいらないですかな」

「――なにかお聞きになったのですか」

「それは聞きました、貴方を萩原へすすめたのは私ですから」

津田はいつもの穏やかな笑いかたで、ずっと以前から萩原が彼の話をしていたこと、また彼がこの土地で嫁を貰い、この土地におちつく決心だということを伝えてから、くめが彼に関心をもちはじめたことなど、淡白な調子で語った。