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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《おれの女房(おれのにょうぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 頁

青空文庫

店に続いた六畳で、五兵衛が米屋の秀さんという若い者と将棋をさしていた。

「火がありますからこちらへどうぞ、お帰りになったらあんまりお賑やかで、びっくりして逃げていらっしゃったんじゃありませんか」

「こっちへおいでなさい先生、お茶でも淹れますから」五兵衛は盤を睨んだままでいった。「――先生には茶じゃあしようがねえか、婆さん早いとこ一本つけてあげて呉んな」

「いや酒は充分です、本当のところもう」

「いつづけの宿酔てえわけですかい、そいつあいいが、待てよ、待て待て待てと、――この銀をこうひいて、こうひいてからどうする」

又五郎は火鉢の側へいって坐った。将棋は終盤にはいって、まぎれがでてもめているらしい、五兵衛も秀も夢中で、誇張していえば眼の色が変っていた。――お勝は新しく茶を淹れ、菓子の鉢などをすすめて、笑いながら、お石の思いがけない饗宴の話をした。

「ふだん男ばかり楽しんでいるのは不公平だ、たまには女も楽しくやろうってね、あたしも呼ばれて顔だけだしたんですよ、なにしろあなた桶屋のおかねさんに、吉さんとこのげんさんが音頭とりですからね、三味線を弾く、唄う、踊るで、ひとしきりお宅の前は見物でいっぱいでしたよ」