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さぶ

さぶ

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《さぶ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 頁

青空文庫

どうか仕合せにやってくれ、と繰返しながら、松田権蔵はだらしなく涙をこぼした。

「へーおっどろいた」万吉が云った、「鬼の眼にも涙ってなあ嘘じゃなかったんだな」

「なにをぬかす、くそ野郎、鬼は鬼でもただの鬼じゃあねえ、赤鬼さまだぞ」松田は涙と水洟を横撫でにしながら、万吉の肩に凭れかかった、「ああ酔った、肩を貸せ、このかぼちゃ野郎」

そのとき平蔵と与平の姿はもう見えなかった。

三人が家へ帰り、おすえが隣りの妻女と差配の妻女とで、あと片づけにかかると、栄二はさぶと向い合って坐り、酒の残っている徳利を集めて、飲みだした。二人とも強いほうではない。さぶは量だけは多くなったようだが、相変らず酔わない酒であった。

「一遍だけ礼を云わしてくれ」栄二が両手を膝に突いて頭をさげた、「――有難うよ、さぶ、本当に有難う」

さぶは片手を額のところで振ったが、口ではなにも云わなかった。

「おれたち二人、組んで」と云って栄二は俯向いた、「――しっかりやろうぜ」

さぶはなにか云おうとして、うまく言葉が出てこないのをもどかしそうに、首を振ったり口をもぐもぐさせたりした。

「おらあ、その」とさぶが云った、「おらもそろそろおひらきにしようと思うんだが」