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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

たまに横町へでも曲ると、すぐ迷児になってしまう。論理の地盤を竪に切り下げた坑道などへは、てんから足も踏み込めない。彼の神経系に至っては猶更粗末である。あたかも荒縄で組み立てられたるかの感が起る。代助はこの青年の生活状態を観察して、彼は必竟何の為に呼吸を敢てして存在するかを怪しむ事さえある。それでいて彼は平気にのらくらしている。しかもこののらくらを以て、暗に自分の態度と同一型に属するものと心得て、中々得意に振舞たがる。その上頑強一点張りの肉体を笠に着て、却って主人の神経的な局所へ肉薄して来る。自分の神経は、自分に特有なる細緻な思索力と、鋭敏な感応性に対して払う租税である。高尚な教育の彼岸に起る反響の苦痛である。天爵的に貴族となった報に受ける不文の刑罰である。これ等の犠牲に甘んずればこそ、自分は今の自分に為れた。否、ある時はこれ等の犠牲そのものに、人生の意義をまともに認める場合さえある。門野にはそんな事はまるで分らない。

「門野さん、郵便は来ていなかったかね」

「郵便ですか。こうっと。来ていました。端書と封書が。机の上に置きました。持って来ますか」

「いや、僕が彼方へ行っても可い」