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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

実は外面の事情は聞いても聞かなくっても、三千代に金を貸して満足させたい方であった。けれども三千代の歓心を買う目的を以て、その手段として金を拵える気はまるでなかった。代助は三千代に対して、それ程政略的な料簡を起す余裕を有っていなかったのである。

その上平岡の留守へ行き中てて、今日までの事情を、特に経済の点に関してだけでも、充分聞き出すのは困難である。平岡が家にいる以上は、詳しい話の出来ないのは知れ切っている。出来ても、それを一から十まで真に受ける訳には行かない。平岡は世間的な色々の動機から、代助に見栄を張っている。見栄のいらない所でも一種の考から沈黙を守っている。

代助は、ともかくもまず嫂に相談してみようと決心した。そうして、自分ながら甚だ覚束ないとは思った。今まで嫂にちびちび、無心を吹き掛けた事は何度もあるが、こう短兵急に痛め付けるのは始めてである。然し梅子は自分の自由になる資産をいくらか持っているから、或は出来ないとも限らない。それで駄目なら、又高利でも借りるのだが、代助はまだ其所までには気が進んでいなかった。ただ早晩平岡から表向きに、連帯責任を強いられて、それを断わり切れない位なら、一層此方から進んで、直接に三千代を喜ばしてやる方が遥かに愉快だという取捨の念だけは殆んど理窟を離れて、頭の中に潜んでい