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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
代助がこう云う気分になる事は兄に対してもない。父に対してもない。世間一般に対しては固よりない。近来は梅子に対してもあまり起らなかったのである。
代助はすぐ三千代の所へ出掛けようかと考えた。実を云うと、二百円は代助に取って中途半端な額であった。これだけくれるなら、一層思い切って、此方の強請った通りにして、満足を買えばいいにと云う気も出た。が、それは代助の頭が梅子を離れて三千代の方へ向いた時の事であった。その上、女は如何に思い切った女でも、感情上中途半端なものであると信じている代助には、それが別段不平にも思えなかった。否女のこう云う態度の方が、却って男性の断然たる処置よりも、同情の弾力性を示している点に於て、快よいものと考えていた。だから、もし二百円を自分に贈ったものが、梅子でなくって、父であったとすれば、代助は、それを経済的中途半端と解釈して、却って不愉快な感に打たれたかも知れないのである。
代助は晩食も食わずに、すぐ又表へ出た。五軒町から江戸川の縁を伝って、河を向うへ越した時は、先刻散歩からの帰りの様に精神の困憊を感じていなかった。坂を上って伝通院の横へ出ると、細く高い烟突が、寺と寺の間から、汚ない烟を、雲の多い空に吐いていた。