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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

その葉には、放肆な白い縞が、三筋か四筋、長く乱れていた。代助が見るたびに、擬宝珠の葉は延びて行く様に思われた。そうして、それと共に白い縞も、自由に拘束なく、延びる様な気がした。柘榴の花は、薔薇よりも派手にかつ重苦しく見えた。緑の間にちらりちらりと光って見える位、強い色を出していた。従ってこれも代助の今の気分には相応らなかった。

彼の今の気分は、彼に時々起る如く、総体の上に一種の暗調を帯びていた。だから余りに明る過ぎるものに接すると、その矛盾に堪えがたかった。擬宝珠の葉も長く見詰めていると、すぐ厭になる位であった。

その上彼は、現代の日本に特有なる一種の不安に襲われ出した。その不安は人と人との間に信仰がない源因から起る野蛮程度の現象であった。彼はこの心的現象のために甚しき動揺を感じた。彼は神に信仰を置く事を喜ばぬ人であった。又頭脳の人として、神に信仰を置く事の出来ぬ性質であった。けれども、相互に信仰を有するものは、神に依頼するの必要がないと信じていた。相互が疑い合うときの苦しみを解脱する為めに、神は始めて存在の権利を有するものと解釈していた。だから、神のある国では、人が嘘を吐くものと極めた。