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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
代助は二返目の所為といい、この三四日来の脳の状態からと云い、そう一図に舞台ばかりに気を取られている訳にも行かなかった。絶えず精神に重苦しい暑を感ずるので、屡団扇を手にして、風を襟から頭へ送っていた。
幕の合間に縫子が代助の方を向いて時々妙な事を聞いた。何故あの人は盥で酒を飲むんだとか、何故坊さんが急に大将になれるんだとか、大抵説明の出来ない質問のみであった。梅子はそれを聞くたんびに笑っていた。代助は不図二三日前新聞で見た、ある文学者の劇評を思い出した。それには、日本の脚本が、あまりに突飛な筋に富んでいるので、楽に見物が出来ないと書いてあった。代助はその時、役者の立場から考えて、何もそんな人に見て貰う必要はあるまいと思った。作者に云うべき小言を、役者の方へ持ってくるのは、近松の作を知るために、越路の浄瑠璃が聴きたいと云う愚物と同じ事だと云って門野に話した。門野は依然として、そんなもんでしょうかなと云っていた。
小供のうちから日本在来の芝居を見慣れた代助は、無論梅子と同じ様に、単純なる芸術の鑑賞家であった。そうして舞台に於ける芸術の意味を、役者の手腕に就てのみ用いべきものと狭義に解釈していた。