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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

で、私の取計らいで例月分を送って上げるから、御受取の上はこれで来月まで持ち応えていらっしゃい。その内には御父さんの御機嫌も直るでしょう。又兄さんからも、そう云って頂く積りです。私も好い折があれば、御詫をして上げます。それまでは今まで通り遠慮していらっしゃる方が宜う御座います。……」

まだ後が大分あったが、女の事だから、大抵は重複に過ぎなかった。代助は中に這入っていた小切手を引き抜いて、手紙だけをもう一遍よく読み直した上、丁寧に元の如くに巻き収めて、無言の感謝を改めて嫂に致した。梅子よりと書いた字は寧ろ拙であった。手紙の体の言文一致なのは、かねて代助の勧めた通りを用いたのであった。

代助は洋燈の前にある封筒を、猶つくづくと眺めた。古い寿命が又一カ月延びた。晩かれ早かれ、自己を新たにする必要のある代助には、嫂の志は難有いにもせよ、却って毒になるばかりであった。ただ平岡と事を決する前は、麺麭の為に働らく事を肯わぬ心を持っていたから、嫂の贈物が、この際糧食としてことに彼には貴とかった。

その晩も蚊帳へ這入る前にふっと、洋燈を消した。雨戸は門野が立てに来たから、故障も云わずに、そのままにして置いた。